浮遊 | INDIGO DREAMING

浮遊

最強のウルトラマンが怪獣に負けてしまう5歳の子供にとっては驚愕の最終回。

番組を見てる途中で頭がクラクラしていつもより早く寝かされた。

高熱が下がらなかった。

おばあちゃんが面倒を見に来てくれていた。

たんすの引き出しからぶら下げた氷嚢を額にあてて私は一日中熱にうなされていた。

目が覚めたらもう夜中になっていて家族が私の周りで雑魚寝していた。

右側におばあちゃんが寝ていた。

と、思ったらおばあちゃんが寝たままふわ~っと浮き上がった。

おばあちゃん!

声にならない心の叫びを発しながら父母に知らせようと左側を見るが皆ぐっすりと寝入っている。

そのうち祖母の体がゆっくりと下降して来て床に戻った。

すると今度は父の体が上昇しはじめ1メートルくらいのところでとまった。

私以外は誰も気づいていない。

今度は母の体がゆっくりと浮遊しはじめる。

こわくてこわくて誰かに気づいて欲しかった。

家族は浮かんでとまってはまた沈むということを順番に繰り返す。

誰も起きない。

そしてとうとう自分の番が来た。

体が上昇して行く。

イヤだ、イヤだ、助けて!

もがいても上へ昇って行く。

おばあちゃん、気がついて! おばあちゃん!

一定のところで上昇はとまり、またゆっくりと下降した。

生きた心地がしなかった。


翌朝、母にこの話をしたら「熱にうかされて変な夢見たのよ」

と言われて終わりだった。

「夢じゃないよ! 本当にあったんだよ!
実際に体験して、この目で確かに見たんだよ!」

としばらく真剣に訴えていた記憶がある。

それくらい夢と現実の区別のつかない体験だった。

ハピネット・ピクチャーズ
DVD ウルトラマン VOL.10