いじめの序曲 | INDIGO DREAMING

いじめの序曲

小学校の入学式当日

私は赤いブレザーを着せられ、父親が撮る記念写真のためにイヤというほどボーズをとらされた。

両親から祝福された特別の日は一日限りで、翌朝はきれいさっぱり忘れ去られたかのようなそっけなさだった。

母は私に聞いた。

「昨日一緒に歩いた道、ちゃんと覚えてる? 一人で行けるかな?」

幼稚園の時だって一人で家路についていた のだから何をいまさら・・という感じだったが

小学校への道のりは今までの2倍以上、歩いて1時間はあった。

「うん、大丈夫だよ。道は他の子達の後をついていけばわかるし。」

私は答えた。

団地だから、同じ小学校に通う子供達は周りにたくさん見かけられた。

そこへちょうどアパートの別棟に住む新一年生二人が三年生のお姉さんに連れられて通りかかった。

母はすばやくその子達を呼び止めた。

「あなた達、○○小学校に行くの? この子と一緒に行ってくれるかな?」

お姉さんが「いいですよ」と言い

母は「ありがとう、助かるわ。じゃ、お願いね」

と言い残してさっさとアパートの中に姿を消した。

私は無神経な母にかなりムッとした。

私が「一人でも行けるよ、大丈夫だよ」とはっきり答えたばかりなのに

何故、頼んでもいないことを勝手に決めるのか。

まったく余計なお世話というほかなかった。

相手の子達に聞く前にまず私の意向を聞くのが先だろう。


私はその一年生達には良い印象を持っていなかった。

幼稚園では別のクラスでしゃべったこともなかったけれど、

先生が注意しても聞かないでおしゃべりしてたわがままな子達だってことは覚えてた。


自尊心の強い私は母にものすごく腹を立てていたから

その子達の会話には加わらず、ふてくされたまま学校に到着した。

彼女達とは違うクラスだったけど

3年生になったらそのうちの一人と一緒のクラスになった。

同じクラスになってからその子にはいじめ続けられた。

今、振り返ってみるとあの入学式の翌朝が全ての元凶だったのかも知れない。

川合 正
いま、子供たちが変だ―親子の会話を取り戻すために